2017年8月3日(木)

第9回「新しい作物の品種改良技術『ゲノム編集』とは?」開催報告

話し手:白武勝裕(名古屋大学大学院生命農学研究科・准教授)

参加者:14名

開催場所:Corda espresso bar

 今回は、名古屋大学生命農学研究科白武勝裕さんにゲノム編集をはじめ、様々な植物の品種改良の技術をお話して頂きました。人類が意図的に植物の品種改良を行うようになって、わずか100年程度、その中で、自然には交雑できない種を胚培養や細胞融合などのバイオテクノロジーを用いて、カサブランカ(ユリの仲間の雑種)やポマト(ポテトとトマトの融合、きちんとした種としては確立していない)などを作製してきたそうです。

 突然変異による品種改良もこれまで様々な植物で盛んに行われており、放射線を照射することにより、様々な品種を作り出してきたそうです。しかし、放射線による突然変異はランダムに起こるため、目的の品種を作るために時間がかかり困難な事が多々あります。一方で、最近登場したゲノム編集技術は、ゲノム(ある生物の全ての遺伝子)を思い通りに、書換えること(編集)ができるため、従来の放射線による突然変異では、不可能であった変異も短時間で導入することができます。ゲノム編集は、その生物が持つ遺伝情報を書換えるだけであり、放射線による変異と見分けることが不可能であるため、今後は、放射線と同じように品種改良に使われるようになるかもしれません。

 実際に、牛の筋肉を作る遺伝子を編集することによって、筋肉が多く、食肉に適した牛を作製したり、褐変を起こす酵素の遺伝情報を編集し、褐変しにくく、食品加工に適したじゃがいもを作製する研究が行われているそうです。また、白血病(血液のもとになる細胞の変異によるがん)の子供から血液のもとになる細胞を取り出して、変異の部分を書き換え、元に戻すことで、白血病の治療に成功した例もあるようです。様々な利点、欠点ありますが、今後、ゲノム編集技術は、注目すべき技術となりそうです。白武さん、集中講義等、お忙しい中、本当にありがとうございました。参加して下さった皆さんもどうもありがとうございました。

放射線による従来の品種改良は、ランダムに起こる突然変異を元にしているので、時間がかかるそうです。

皆さん、白武さんのお話に興味津々です。

ゲノム編集技術で、褐変しにくく、食品加工に適したジャガイモを作る試みがあるそうです。