2019年11月30日(土)

番外編「今年のノーベル賞研究をひも解いてみよう!」

話し手: 化学賞、新留康郎さん(鹿児島大学 理学部); 物理学賞、 塚本祐介さん(鹿児島大学 理学部); 医学生理学賞、南謙太朗さん(鹿児島大学 医歯学総合研究科)

開催場所:Corda espresso/bar

参加人数:14名

 11月30日に特別編今年のノーベル賞研究をひも解いてみよう!を開催しました。

 

 ノーベル化学賞は、鹿児島大学工学部の新留さんにお話して頂きました。2種類の金属を電解液に浸すと電池ができるのですが、電池で発生する電力(起電力)は陽極と陰極の電位差で決まるそうです。桜島小みかんに亜鉛や銅など様々な2種類の金属を桜島小みかんに差し込んで調べたところ、組み合わせによって発生する電力が全く違うことがわかりました。リチウム電池は、陽極にコバルト酸リチウム、陰極に炭素を使っていて、この電位差が大きいため、発電力が高い優れた電池になるそうです。理論的にはそんなに難しくないのですが、リチウム電池は、爆発しやすく、安全で電池として使用できるものの開発は相当難しかったようです。リチウム電池は充電の性能も高く、500回以上の充電に耐えられるそうですが、そういった充電や放電は、センサーチップで厳密に制御されているそうです。携帯電話や新幹線様々なところで使われているリチウム電池を開発した吉野先生は、たしかに素晴らしいですが、その影には、数多くのエンジニアの努力があり、今回のノーベル賞は、そういったエンジニアの方々も含めたチームプレイなのかもしれません。

 物理学賞は、鹿児島大学理学部の塚本さんにお話して頂きました。今回の物理学賞は、専門家から見るとちょっと特殊で、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の理論と地球外惑星の発見という異なる2つの分野に贈られたようです。ビックバンの直後、宇宙全体はオレンジ色だったそうですが、その名残が宇宙の全方位に放射している電磁波CMBなのだそうです。これを最初に発見したベル研究所の科学者達は、全方位から変な電磁波が検出されるので変なノイズがあるとあまりよくわからないまま論文に報告したそうです。逆にビックバンの証拠としてCMBのような重要なものがあるはずだと探し求めていたのが今回ノーベル賞を受賞したピーブルスさん達で、その後、CMBも実は、一様でなく、温度ゆらぎがあることを突き止め、それを基に、銀河の分布、宇宙の寿命、ダークマターのようなものが存在することを予測..etcをほとんど一人で明らかにしたのがこのピーブルスさんなのでそうです。太陽系外惑星はマイヨールとケローによって最初発見されたそうです。惑星は、恒星の周りを回っている天体ですが、もしそういった天体があるとすれば、その天体が地球と恒星の間に入った瞬間に、その恒星の光は一瞬弱まります。その光の減弱によって太陽系の外にも惑星があることを突き止めたそうです。他に救急車のサイレンで有名なドップラー効果は、光でも見られる現象で、これを利用することでも惑星の存在がわかるそうです。2019年までに太陽系外惑星は4000個以上見つかっているそうです。

 医学生理学賞は、鹿児島大学医歯学総合研究科の南謙太朗さんにお話して頂きました。今回対象となった細胞の低酸素応答は、がんなど様々な生命現象に関わる重要な応答で、HIF-αと呼ばれるタンパク質が重要な働きをしています。このタンパク質は、酸素を運ぶ赤血球を誘導するホルモン、エリスロポエチンの研究中に発見されたそうです。HIF-αは、酸素が十分ある状態では、pVHLという別のタンパク質と結合することで、分解され、不活化されていますが、低酸素状態になると、その分解が起こらなくなり、エリスロポエチン以外にも多くの遺伝子の発現を誘導するそうです。現在では、がんを始めとした様々な病気の薬のターゲットとなっているそうです。

 短い時間でしたが、参加者の皆さんも積極的に質問して下さり、とても盛り上がりました。

桜島小みかん電池!

HIF-αが低酸素応答するしくみ。

参加者の方も熱心にノートを取られていました。